建築家に家を頼むには、過去の建築家を参考にすべき。信用の仕方は。
本当に建築家に頼んで良いのか
「本当に建築家に頼むのか」という根本的な問題である。
もし建築家のアトリエへ足を運ばなくても自分達が思い描いた家が建つなら、
いくつかのハウスメーカーを比較しながら「ここにしようか」と決める方が精神的には楽だと思う。
全く同じではないにせよ、住宅展示場で見た建物が変更を求めなければ、
契約した金額で建つのであれば、やはりそれが最も安心だろう。
何より、1対1の関係で相手が信用に値するかを決めるのはとても気が重いことのはずだ。
家を建てる計画が持ち上がるまで全く知らなかった建築家に託すのか、
テレビやチラシなどで見たり聞いたりしたことがあるハウスメーカーに頼むのかを比べたとき、
後者を選択するのはむしろ自然な流れだろうと思う。
保険が質を担保しないのは社会の原則だと私は考える
高度情報化社会で信頼を得るということは、メディアに多く露出することにかなり近い。
それには、2つの方法がある。
費用を払い広告する方法と、メディアに求めてもらう方法である。
前者は、体力のある企業がもちろん強い。
テレビ、ラジオ、新聞、書籍、インターネットの検索サイト、SNSと、広告するところはいくらでもあるが、
それぞれがビジネスで、無料のものは基本的にない。
よって体力に比例するのである。
後者は、例えば住宅誌やテレビに求められるということで、建築家同士の真剣勝負となるのでこちらのハードルも高い。
建築家が家を建てたい人とつながるには、以前なら人づてによるか、
建築専門誌や住宅誌に掲載してもらうしか方法がなかった。
これらの媒体は、編集部が作品を見て掲載の可否を決める。
その雑誌のコンセプトに合っているか、もっとはっきり言えば、
「買いたい」と思わせることができる作品であるかという点で評価が下される。
私達にとっても、コンスタントにメディアに作品を発表することは大切なことである。
初めて作品がテレビで紹介されたのは、2004年の「平野西の家」。自らが望んでいた住宅誌に掲載されたのは、
さらに2006年の「城陽の家」まで待たなければならない。
それまでは、何らかのつながりがある人と仕事をしてきたのである。
しかし1990年代の後半、インターネット環境が急速に発展し、状況が変化し始めた。webという表現もあるが、
これは「クモの巣」を意味する。まさに、クモの巣のような情報網が全世界に張り巡らされ始めたのである。
この社会環境の変化によって、私達を取り巻く状況も変わっていった。
当社も、2003年にwebサイトを立ち上げた。初期は知人に作成してもらったが、以後は自社で作成。
試行錯誤しながら我々なりに改善を積み重ねてきたつもりだ。
誰もが自分の考えをダイレクトに表現できる、小さなメディア(webサイトなど)を持てることは素晴らしいことだと思う。
ただ、書籍にしてもテレビにしても、他者の目が入ることによって情報が精査されているという信頼感もある。
高度情報化社会において、情報を得るのは簡単だ。
その多くの情報の中からどれが信用に値するのかの取捨選択は、反対に難しくなっていく。
そんなとき、どうやって判断するのか。私が拠り所にしているものが2つある。

1つは直感だ。
直感とは、自分の全人生をかけて出した答えとも言える。「好ましい」「好きになれる」「響く」など、
かなり感覚的な部分で取捨選択をする。
私がこうして生きているのは、多くの先祖が厳しい競争を勝ち抜いてきたからだ。
現代社会よりもっと過酷な生存をもかけた競争があったに違いない。
先祖がそれらを勝ち残ったからこそ私は生きている、と言ってよい。
それに値する能力を、今生きる人々は持っているとも言える。
直感とは、全人生をかけた判断と書いたが、700万年の英知をかけた判断だと思っているのだ。
もう1つは、原理原則だ。
当社にも、よく新商品等の営業にきてくれる。
「新しく開発された技術で、電気代がこれだけ下がります。
開発したばかりでまだ他メーカーよりは高いですが、5年で元が取れます」など。
こんなときは、基本断る。
本当に価値があるものなら、せめて建築業界のことなら自然に耳に入ってくるだろうし、
さらに市場が求めれば需要が増し、自然に値段は適正なところまで下がっていくはず。
「誰よりも先に、自分だけが得をしたい」という幻想を捨てれば、自然と本質は見えてくると思うのだ。
また、「この期日までに決めてもらえれば、これだけ値引きします」という類の話にも付き合わない。
土地探しをしているクライアントには
「急かされたら断るくらいの気持ちで良いと思います。本当に必要なら、自分から欲しいと思うはずですから」とアドバイスする。
家創りのなかで一番大切なのは、後悔がないということだと思っている。
ビジネスの世界では、「損をしますよ」という強迫観念をちらつかせ、決断を迫るという場面がある。
しかし、迷っているということは、そこまで自分の人生に必要のないものだと私は思う。
家を建て替える際には、引越しが必ずある。これは、空間を豊かにするには絶好の機会だ。
これからの人生に、この服、この本、このイスが必要か。ずっと一緒に暮らすべきか。
迷ったら捨てるくらいの思い切りがあっていい。
建築家に頼んでよいのか。
残念ながら、その答えを建てる前に持っている人はいない。
だからこそ、勇気あるクライアントを尊敬するし、その勇気に何としてでも応えたいと思う。
人は、これまでの人生のなかで最も深く関わってくれる、と感じたときにその相手を信用し始めるという。
初めての面談、毎回の打合せ。全てが真剣勝負なのである。
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